ドスン、ドスン、ドスン、チリン。ドスン、ドスン、チリン。
何かの呪文のようだがそうではない。家の猫が階段を下りるときの音だ。黒く太った猫で足が短いため、一歩一歩が重たく響く。夜中、家族がトイレに行くのかと思ったら猫の足音だったということも少なくない。
中々警戒心が強く、慣れるまでは常に1メートルほどの間隔を取り、容易に人に触らせない。俺も撫でようとしても逃げられてばかりだったが、ようやく警戒されなくなった。
そのわりに俺の部屋が好きで、ドアが開いていると勝手に入り遊んでいる。半開きの時は頭で押して入るのでまんざらバカでもない。
名前はアレックスと言う。CSIというアメリカのドラマに出てくる黒人女性からとったらしい。俺はデブ太郎と呼んでいる。